CASE28多国籍のビジネスリーダーと
対峙できるマインドと
スキルを鍛える

三井住友信託銀行株式会社Sumitomo Mitsui Trust Bank, Limited

インタビュー風景

柔軟かつチャレンジ精神のある若手層向けにグローバル人材育成を行う企業が多い中、三井住友信託銀行株式会社では、既存の国内ビジネスを支える上層部を対象とした施策として「管理職向けEnglish Boot Camp」に取り組まれています。この施策は、いかにしてビジネスで使える英語のスキルアップ/マインドセットに寄与したのでしょうか。施策を担当した人事部の小篠 岳志氏、匠 智子氏にお話をうかがいました。

グローバル化に向けて、
会社の「本気」を示すプログラムを

ーこの施策で役員・管理職を対象にした
背景を教えてください。

小篠:今回の対象者である役員・部長層は、担当者時代にはバブル崩壊以降の長期に渡る不良債権処理問題に直面していた世代です。当時は国内の案件を優先せざるを得ず、会社として海外ビジネスを縮小したこともあって、この世代には海外経験の機会を十分に提供できていませんでした。 その後、グローバルビジネスを再度拡大し、海外ビジネスの重要度が一段と高まっている中で、今後経営の中枢を担う層に海外経験が不足しているという課題意識が経営層にありました。こうした状況を受け止めて、会社として改めて機会提供をすることにしました。当時社長に提案した際には、時間・費用の双方で相応のコストがかかりますが「是非ともやるべき投資だ」と、賛同を得た施策です。

人事部 人材育成チーム 調査役 匠 智子 氏
人事部 人材育成チーム 調査役
匠 智子 氏

ー施策の全体像は?

小篠:対象者は10名強で、2023年で3期目を迎えています。ゴールとしてIMDでの5日間のオープンプログラムへの参加を設定しています。短期間とはいえ、各国のビジネスパーソンとやりとりすることになりますから、相当の英語力が求められます。そのため、事前に9か月間の英語学習の機会を設けました。

前半の3ヵ月間は英語の語彙力とリスニング力強化の特訓プログラムでTOEIC L&R(以下TOEIC)で700点以上をめざします。英語の基礎力を底上げしたのち、後半の6ヶ月間で発信力の強化を目的に、オンライン英会話を活用した学習に加えて、毎週のディクテーション・シャドーイング課題に月2回程度の英語表現やマインドセットの講義、そして実際にネイティブスピーカーとビジネステーマについて議論する「Deep End Discussion(DED)」を複数回組み込みました。

ー参加者からの反応はいかがでしたか?

小篠:海外経験のない方を対象としたので、普段の業務で英語を必要としない方は指名されたことへの驚きもあったようです。とはいえ、外資系企業との業務提携や合弁会社設立など、会社としてグローバルな動きは盛んになっていますし、日常的に海外のビジネスに触れる機会が明らかに増えています。「やらなければならないと思っていた」「避けてきたけれど、心に引っ掛っていた」という方が多かったです。「会社の経営を担っていくためには必要な経験だ」と仰って下さった方もいらっしゃいました。

ー第1段階となる英語の特訓プログラムは、
どのように進めたのでしょうか。

小篠:このプログラムは社内内製で組み立てました。初期スコアに応じて3つのコースに分け、各コースのレベルに沿った市販の教材を使って学習してもらいます。コーチングにも力を入れ、週に一度、メールベースで進み具合を報告してもらい、学習方法などについてフィードバックを行いました。

ー運営サイドも、
かなりの労力が求められるプログラムです。

小篠:必ず成果につながるプログラムにしなくてはならないと思っていました。DEDを有意義な体験にし、ビジネススクールで戦えるようにするために必要な出発点のレベルを敢えてTOEICで表すなら、700点は欲しいと言われておりましたので、受講生の役に立つと思えるものは取り入れました。

実は私自身、英語学習では思うようにTOEICのスコアが伸びなかったりと、苦労してきました。このプログラムを提供する前に、どうすればスコアが伸びるか様々な学習法の教材を参考にしながら、「これだ!」と思えた勉強方法を自分自身で実践してみて、実際に3ヵ月間でスコアを伸ばせることを確認しました。

人事部 主任調査役 小篠 岳志 氏
人事部 主任調査役
小篠 岳志 氏

ー小篠さんご自身の経験を活かした
実践的な内容になっているのですね。

小篠:実施にあたっては、モデルケースとして「平日毎日2時間、土日で計3時間」という勉強時間を設定しました。とはいえ、多忙で時間の捻出が難しい方ばかりです。学習法の説明やコーチングでも「隙間時間を徹底的に活用してください」と伝えて、通勤時間はもちろん、社内を移動するときに憶えたい単語を付箋に書いてつぶやきながら歩いたという方もいました。最終的には3か月間の全体平均で130点ほどスコアが伸びました。

匠:中には3か月で250点上げた方もいます。その後の発信力強化フェーズ中もTOEIC受験を続けて下さった方が多く、IMD渡航前には全体平均で200点以上スコアが伸びていました。

「Deep End Discussion(DED)」で
マインドセットを変える

ーTOEICの結果から御社オリジナルの特訓プログラムだけで十分に英語力が伸びたことがうかがえます。
IMDの前段階として、「DED」を組み込んだ経緯は?

小篠:一番は外国人のビジネスパーソンと英語で議論できる力をつけるためです。TOEICはあくまでも基礎能力の強化が目的で、スコアが高いだけで対等にやりとりできるわけではありませんので、スピーキングやディスカッション、ファシリテートといった能力は実践をくり返すことが最も効果的と判断しました。「DED」では、参加者がひとりで外国人3名を相手にディスカッションを行うというハードなものですが、その効果に大きな期待を寄せていました。

ー初対面のメンバーで議論を深めることは、
日本語であっても難しいところです。
小篠さんも「DED」を受けたそうですが、
具体的に、どのような効果を感じましたか?

小篠:マインドセットが何より大事であると気付けました。マインドセットを変えるには、ただ書籍や動画などを見聞きするだけでなく、それに則って実際に自分で準備し、経験すること。その中で小さな成功体験を積み重ねることによって養われると感じました。「DED」は、まさにマインドセットを変える機会だと思います。
特に多国籍グループでの会話では、積極的にカットインしていかなければ自分の意見を言い出せず、存在感が薄れてしまいます。それを克服しなければならないと自覚し、「DED」で実践することで、マインドセットが醸成されていったり、経験を重ねることで「場にコミットしたり、貢献するとはどういうことなのか」を体感として理解できるようになるのではないでしょうか。

ー海外のミーティングは参加するだけでなく、自分の意見を表明することが議論への貢献になると捉えられています。
日本人の場合、カットインすることに気をとられ、「貢献」というニュアンスはつかみきれていないところがあるのかもしれません。

小篠:自分の意見を示すことではじめてその場の一員になれるということですが、「貢献」について、解釈の幅を広げてみると、「本当にこんなことを言ってもいいのだろうか?」と躊躇する気持ちのハードルを越えて発言すること自体が実は既に貢献なのではないかとも思いました。それには一度や二度でなく、何度も経験してとにかく「慣れる」ことが必要。「DED」は、葛藤や逡巡を抜け出す機会になることを実感しています。

インタビュー風景

ー「DED」終了後には毎回、ディスカッション相手である外国人やアセッサーからフィードバックの時間も設けられていました。

匠:「発言が少なかったですね、準備が足りなかったのでは?」「ネイティブと同じように発音する必要はないけれど、その発音では相手に伝わりませんよ」といったように、かなり率直なフィードバックもありました。逆に「良いタイミングでカットインできていた」「意見が素晴らしかった」「あなたのフレンドリーな雰囲気が好きだ」などと、良いところは褒めていただけて、励みになっていたようです。

小篠:参加者は高位のマネジメント層ということもあり、「普段はこうした指摘を受ける機会はほとんどないのだが、はっきりと言ってもらえたことで心に響いた」と仰って下さった方もいました。一方で、気にしないそぶりを見せながらも、次回から内容がぐっと良くなった方もいました。率直なフィードバックの重要性を感じました。

匠:DED直後のフィードバックだけでなく、後から、要素毎に提示いただいたDEDの結果を分かりやすくスコアで還元したことも功を奏したかもしれません。例えば、発言回数やカットインの項目が伸び悩んでいた参加者は、入念に準備して「DED」に臨み、「まず、必ず議論の最初に発言する」などの課題を自身に課して発言したりしていました。そうして勢いと慣れを獲得することで、徐々にスムーズに意見を述べられるようになったり、適切なタイミングでカットインして議論を深められるようになっていました。
IMDのオープンプログラムに参加してからも、事前準備をしっかりとされていたようです。理解が追いつかないことがあれば、グループのメンバーに「今のところが分からなかったから、教えてくれない?」と、助けを求めることで学びを深めていて。そこからあらためて自分の意見を組み立て、果敢に議論に参加していました。

ーIMDでは成果を存分に発揮できたのではないでしょうか。

小篠:容易なチャレンジではなかったと思いますし、誰もが必死にサバイブしていました。英語力の強化は出来るだけのことをしてきましたし、ディスカッションやファシリテーションについては「DED」で場数を踏んでいます。そもそも経営を担うという意識があって目線が高い方々ということもありますが、これらの特訓も後押しとなり、意欲的に取り組んでいただけたものと思います。
中には、懇親会で南アフリカの女性だけのグループに単身で飛び込んでいった男性の参加者もいました。この方は普段仕事で英語を使っていたわけではなく、ご自身曰くどちらかといえば控えめなタイプとのことでしたが、「せっかくの機会なのだから、IMDではこれまで接したことのないグループとオープンにコミュニケーションを取っていこう」と決めていたそうです。

匠:「DED」のインパクトが、かなり大きかったのだと思います。外国人3名を相手に自分の意見を述べたり、ディスカッションを深掘りするような質問を投げかけたりといったトレーニングをしていたおかげで、IMDでぐっと入り込もうとする勇気を持てるようになったのではないでしょうか。

会社を変革するために、
トップマネジメント層が
自ら変わる姿勢を見せる

ープログラム終了後の参加者の変化は?

匠:もともとあった「将来経営の中枢を担っていく」という自負心にグローバル感覚が加味され、グローバルスタンダードを意識した意思決定をしていかなければいけないと実感を持ってご認識いただけたようです。そのために身につけるべきスキルや英語力の必要性も感じられているようで、プログラム終了後も、語学力の維持・向上を目指して自主的に英語学習を継続されています。

小篠:トップマネジメント層がグローバル感覚を持ち、学習する苦労も含めて理解しているということは大切なのではないかと考えています。また、参加者には「学んだことや経験したことを、部下の方にも伝えてほしい」と依頼しました。若手・中堅層へも「あの人のようにキャリアを積んでいくなら、グローバルで通用する力が必要なんだ」というメッセージになると思います。

匠:実際にご自身の体験も踏まえて部下に英語学習を勧めて下さっており、社内の全社員向けの公募英語学習プログラムへの参加者が格段と増えました。

ーまずは組織の上から変わっていくこと、変わる姿勢を見せたこと。
グローバル人材育成を若手層でなく、
あえてトップマネジメント層向けに実施したことで、二次的効果があったことがうかがえます。

小篠:グローバル化に限らないことかもしれませんが、会社が変わろうとする時には、上の層から変化を示すことが出来ると、全社にも波及しやすいのではないでしょうか。
ボトムアップも含めたあらゆる層へのアプローチが必要とは思いますが、今回役員・部長層という方々にこのようなハードなプログラムを完遂いただけたことに、ご本人に限らない意義性があったのではないかと考えています。

匠:本件は経営を担っていく方々を対象とした施策ですが、中堅層や若手向けにもプログラムを提供して、組織全体にアプローチしていく方針です。次のステップとしては中堅層向けのプログラムをさらに拡充させ、一段とグローバルビジネスへの対応力を高めていきたいと思っています。

インタビュー風景

日本人がビジネスで使えるだけの英語力を鍛えることは、相当の努力と覚悟が必要となります。効率的に英語力を強化させるだけでなく、そこから踏み込んで多国籍のビジネスリーダーと対峙することをめざしたことから、グローバル化に向けた会社の本気度が伝わってきました。

岡谷鋼機

好奇心を刺激し、視野を広げる
自文化理解研修

CASE29岡谷鋼機

三井住友信託銀行

多国籍のビジネスリーダーと
対峙できるマインドとスキルを鍛える

CASE28三井住友信託銀行

大月市役所

官と民の共創が生み出す
創発効果

CASE27大月市役所

東京都教育庁 起業創業ラボ

共創が生む
新しい教育のかたち

CASE26東京都教育庁 起業創業ラボ

野村ホールディングス

ファイナンス部門が取り組む
「専門性×グローバル」
両利きの人材育成

CASE25野村ホールディングス

伊藤忠テクノソリューションズ

変化の激しいIT業界
未来を見据えたグローバル人材育成

CASE24伊藤忠テクノソリューションズ

NTTドコモ

新入社員のリモートワーク適応
職場と育成をいかに連動させるのか

CASE23NTTドコモ

エヌ・ティ・ティ・データ

DXの意識と行動の浸透
顧客と共に創出する未来

CASE22エヌ・ティ・ティ・データ

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トップブランドを目指す“Kao”の
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CASE21花王

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CASE20東京海上日動火災保険

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CASE19バンダイナムコアミューズメント

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CASE18住友商事

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CASE17日本航空

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グローバルビジネス意識を向上させる
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CASE16サントリーホールディングス

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CASE15アドヴィックス

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CASE14共立メンテナンス

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CASE13サンゲツ

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CASE12東京急行電鉄

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CASE10Dell EMC

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CASE09豊田市役所

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CASE07横河電機 情報システム本部

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CASE06ジェイティ奨学財団

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CASE05三重大学・鈴鹿医療科学大学

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CASE04住友金属鉱山

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CASE03東京海上日動火災保険

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CASE02パーソルキャリア

サントリーホールディングス

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CASE01サントリーホールディングス

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