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- 2020.07.27
- グローバル
各社が抱えるコロナ禍のグローバル人材育成問題
新型コロナウイルスの蔓延により、グローバル人材育成には “海外“での先行経験が重要という常識が揺らぎつつあります。海外派遣研修の実施可否判断と、中止・代替の対応策について考えていきます。コロナ禍のグローバル人材育成はどのようになっていくのでしょうか。
ウィル・シードでは、年間300社の人事のみなさまと「グローバル人材育成」についてお話をいたしております。その経験から、4月の緊急事態宣言以降、海外派遣研修の実施可否判断を各社がどのように進めたか、またその後の対応にどのような違いがあったのかを整理してみたいと思います。
「延期」か「中止」か「代替」か
4月の段階では、「ひとまず延期」企業が最も多かったのではないでしょうか。4月時点で代替を考えていた企業は少なかったと思います。その後、4月から6月までの間に、グローバル人材育成は大きく動きを見せました。「ひとまず延期」企業が、「今年度中止」か「代替」かの判断を迫られていったのです。
事業のグローバル化に即して育成すべき人員KPIを決定している、且つ、派遣者への告知が済んでいる企業は、海外研修を代替してでもグローバル人材育成に取り組む必要があり「代替」を選択し、その他多くの企業は「中止(来年への延期)」判断をしたように伺えます。
「中止」判断をした事例―実施時期を延期できない長期派遣施策
数か月から年単位におよぶグローバル人材育成プログラムは、1年間の異動とセットで対象者が選抜されているケースが多く、対象者は秋から冬にかけて現場から離れて数か月間研修に参加するのが一般的です。つまり、実施時期を簡単に動かすことができません。
4月から渡航予定だったにも関わらず、2か月待っても外務省の緊急レベルが引き下がらず、派遣予定国の封鎖も解除されないケースでは、6月の時点で中止を決めた企業が多かった印象です。一旦現場からの異動が決まり、行き場のなくなった派遣予定者を人事部でそれ以上抱えていても、会社のためにも派遣者のためにもならないという判断が多かったように思います。
海外トレーニー施策などは、このケースにあたります。自社の海外拠点ビジネスを知る、(期間が長期にわたるため)ローカルスタッフとの協働を超えたリーダーシップ開発機会、としても活用できるトレーニー制度を運用できなくなり、「他にどのような手段でグローバルリーダー育成を実現できるのか」という苦悩の声が多く聞かれました。
「代替」判断をした事例―実施時期を延期できない短期派遣施策
派遣者選抜が完了している、且つ、プログラム実施時期がずらせない企業の内、プログラム期間が比較的短期の企業では、代替施策の検討が進んでいます。
「派遣者を選抜した以上はプログラムを実施したい」「グローバル人材人員計画上、ここで止めてしまうと事業への影響が大きい」「今年止めてしまったら、全社のグローバル化の流れを止めてしまう」などの声を多く聞きました。本当に海外に行けないのか、いつまで渡航できないのか、海外渡航できない状況下、国内で何ができるのか、各社、頭を悩ませる状況となりました。
「延期」判断をした事例
海外研修の「延期」は、グローバル人材育成をするにあたって、海外の空気を吸わせて、現地のリアルビジネスやローカルの人々との交流や協働を体験させたいという意思を持った企業がとった判断でした。
年度内での予算消化が必要な為、延期期限は2021年3月までと年度内が多くみられます。決算期である3月を除き、1月・2月に渡航延期のケースが最も多くなっています。海外渡航できそうなギリギリのタイミングまで延期をするためには、対象者が年明けに現場を離れることが可能な場合に限られます。
また、これらの企業に、ついてまわるのが「本当に2021年1月・2月になったら新型コロナウイルスは落ち着き、渡航できるようになっているのか?」という問題です。