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- 2017.06.23
- グローバル
ダイバーシティ・マネジメント力を高める機会としての海外赴任
日本企業の海外進出や国内での優秀人材の確保のためのキーワードとなっている「ダイバーシティ」。この「ダイバーシティ環境をマネジメントできる人材」の育成について考えてみます。
日本企業の海外進出や国内での優秀人材の確保のためのキーワードとなっている「ダイバーシティ」。最近では『働き方改革』の流れもあり、さまざまな働き方を選択できる制度の整備などが急速に進められているように感じます。一方で、制度や仕組みでは補いきれない「ダイバーシティ環境をマネジメントできる人材」の育成はどうでしょうか。
ダイバーシティをマネジメントする場として「海外赴任」という機会があります。アメリカのある研究によると、米国企業の米国人海外赴任者のうち、途中で「失敗」に終わる割合は10~45%といわれています。日本での研究はあまり多くないのですが、「任期満了前」または現地での「事業貢献前」に帰国する事例は後を絶ちません。
ほぼ単一な文化的背景を持ち、ハイコンテクストで、報連相など共通認識の多い職場環境で成果を出すことを求められてきた日本人が、「多様性」に富んだ環境でマネジメントを経験する際、さまざまな壁に直面する様子は想像に難くないでしょう。
しかし、一歩引いてみると「海外赴任」という経験は、実践的で“修羅場度”の高い「貴重な育成機会」と捉えられるのではないでしょうか。海外赴任の目的は、もちろん現地での事業貢献ですが、適切なサポートさえあれば、そのプロセスを通して赴任者の実践的な能力を開発する機会にもなりえます。
では「適切なサポート」とは何でしょうか。
「新参者のマネジャー」に対する周囲の見方を自覚する
適切なサポートの1つ目は、赴任先で「どのように見られるのかを自覚」させることです。
リーダーシップ開発の分野では、新しいマネジャーが組織に参画した時、その組織に貢献するまでの猶予期間は90日(3ヶ月)と言われています。着任から3ヶ月経っても、組織に貢献していると周囲から認められない場合、誰からも信頼も得られず、指示も通らず・・・成果創出には程遠い状況に追い込まれます。
まずは、自分自身が「品定めされる(評価を受ける)」立場であること、また、「評価されるまでには“期限”がある」ことを理解する必要があります。
成果創出のための戦略を考える
では着任から90日で何に取り組むか。「何か成果を出さないと」と焦り、いきなり自分の指示でものごとを動かそうとする日本人赴任者が少なからずいます。客観的に見ると、明らかに逆効果です。
そのため、2つ目のサポートとして、赴任前にしっかりと「成果創出までのステップを理解」してもらうこと、そして、「ステップを登っていくために何が必要か理解」し、できる限りの「準備」をしてもらうことが重要です。
戦略を実行し、想定とのズレと、それを生み出す要因を考える
事前準備をして現地でアクションしたとしても、必ずしもうまくいくとは限りません。少なくとも着任から90日は、ステップを登るために「作戦実行→振り返り→作戦の再構築→実行→振り返り・・・」というPDCAを高速で回していく必要があります。しかし現地着任後のただでさえ忙しい時期に試行錯誤をくり返すのは、心理的にも負荷の高い作業です。
そのため、3つ目のサポートとして、着任直後の正念場の時期に第三者が介入し「思考時間の確保」と「思考のサポート」をすることが効果的なのです。弊社では、赴任者ごとにメンターを1名アサインし、定期的にアクションの振り返りや戦略再構築をサポートしています。
一連の過程からダイバーシティ・マネジメントの知恵を創出する
現地での試行錯誤を振り返り、日本とは異なる環境での「成功パターン」を意識的に蓄積することで、今後想定されるさまざまなダイバーシティ環境で応用できる「マネジメント力」を身につけられるのではないでしょうか。